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岩男2ボスで小ネタ
お題『百物語』で岩男

2.手向けの花
ヒートと怪我した雀
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2.手向けの花


― ― ― ―


『飼ってもいい?』

そう言ってヒートが連れてきたのはヒートの小さな掌にすっぽりと収まってしまうほどに小さな小さな雀だった。

『森で見付けたんだけど、怪我して飛べないみたいなの。ねぇ、飼ってもいいでしょ?』

翼の付け根を傷付けたらしく、うっすらと羽を血で滲ませた雀はメタルマンに向かってまるで訴えるかのように弱々しくチィチィと鳴いている。
メタルマンはヒートマンと雀を見比べて酷く困った顔をした。

『ヒート・・・簡単に生き物を飼いたいなんて言っちゃ駄目だろう』

『でも怪我してるんだよ!』

いい顔をしないメタルマンにどうにか許してほしくてヒートマンは必死に食い下がった。
だがメタルマンにもすんなりと許せない理由がある。こんなに小さく弱い生き物はきっとすぐに死んでしまう・・・そうなれば一番悲しむのはヒートマンだ。可愛い弟の悲しむ顔は見たくない・・・だが、大きな瞳に涙を溜め今にも泣きそうなのを我慢しながら見つめられては揺らいでしまうのも兄心というもので。

『・・・ちゃんと世話出来るのか?』

『ちゃんとする!だからねぇ、メタル・・・』

こういう時、長男という立場がちょっとだけ辛い。



『雀って何食べるの?』

談話室のテーブルに小さな籠にタオルを敷いただけの即席の鳥籠がちょんと置かれていた。中には翼に包帯を巻かれたこれまた小さな雀が黒々とした瞳でヒートマンを見つめている。
ヒートマンの後ろから覗き込んでいたクラッシュマンはその問いに首を傾げた。

『・・・E缶とか?』

『ピピじゃないんだから』

『じゃあクラッシュボム』

『もう!ちゃんと考えてよ!』

クラッシュマンとしてはそれなりに考えた方なのだがどうやら七男はお気に召さなかったらしい。

『雀にロボットの飯が食えるわけないだろーが』

呆れたような声と共に、ニュッと伸びてきた黄色い手がヒートマンの掌に何かを乗せる。

『ほれ、これやってみろ』

『なにこれ?』

『パン粉』

いつの間にか現れたフラッシュマンに言われるままにパラパラとパン粉を巻けば今まで動こうとしなかった雀がパッと立ち上がりパン粉に向かって嘴を伸ばしたではないか。
ツンツンとつつきパン粉を食べる姿に感動したようにヒートマンがテーブルに身を乗り出した。

『食べてるー!』

『おー!凄いなフラッシュ!』

『ま、次からはクラッシュボムなんざ食わそうとすんなよ』

『ま、まだやってないぞ!』

賑わうそこへ任務を終えたクイックマンが入ってきた。

『おいハゲ、俺のE缶』

『てめぇで取りやがれ』



『なかなか元気になってくれないの・・・』

両手にしっかりと鳥籠を抱えたヒートマンを見下ろして、エアーマンはそっと眼を細めた。
ヒートマンが森で雀を拾ってから一週間が経った。始めこそ餌をつつき高い声で囀ずっていた雀も日を追う毎に弱くなり、今ではすっかり動かなくなってしまった。
そして、それにつられるようにヒートマンの元気もなくなっていった。

『大丈夫かなぁ・・・どうしたら元気になるんだろう・・・』

『・・・早く元気になるといいな』

『うん・・・』

こんな時、長男のメタルマンや末のウッドマンならもっと気の利いたことも言えただろうか。上手い慰めの言葉も浮かばず、すっかり元気のなくなったヒートマンの後ろ姿をただ見送ることしか出来ない自分が歯痒い。

『エアー兄さん』

『・・・バブルか』

のんびりとした声に名を呼ばれ、振り返った先にはいつもはなかなかプールの中から出ようとしない一つ下の弟。
水掻き状の足でピョンピョンと跳ねて隣にやってくると、とうに見えなくなったヒートマンの背中を追うように廊下の先に視線を向ける。

『あの子はもう、気付いてるよ』

もう、長くないのだと・・・ヒートマンが雀を拾ってきたあの日、メタルマンが一番危惧していた別れがすぐそこまで近付いていることをヒートマンも気付いているのだ。
ただ、認めたくなくて・・・認めるのが怖いだけで・・・

『今はそっと見守っててあげよう』

『・・・そうだな』

『大丈夫、あの子は強い子だよ。なんたって僕らの弟で、博士の息子なんだから』

きっと、大丈夫・・・そう言ってバブルマンはエアーマンと同じようにそっと眼を細めた。



『ウ゛ッド・・・』

森の中で動物達と戯れていたウッドマンは一つ上の小さな兄の姿に肩に留まっていた鳥達が飛び立つのも構わずに立ち上がった。大きな瞳から大粒の涙をポロポロと溢すヒートマンの姿に慌てて駆け寄ると目線を合わせるように膝をつく。

『ど、どうしたのヒート!?』

『雀が・・・』

『え?』

『雀が・・・死んじゃった・・・』

俯いたままのヒートマンに一体どうしたのかとオロオロしていれば何かを包むように閉じていた手をゆっくりと開いた。
開いた両掌の中には静かに横たわり、二度と動くことのない雀の姿。

『あんなに、一生懸命お世話したのに・・・』

『ヒート・・・』

『なのに・・・なのに・・・』

『・・・お墓、作ってあげよう?』

『・・・・・・う゛ん゛』

小さな小さな雀を包む小さなヒートマンの手を大きな大きな自身の手で包み込んで、ウッドマンは優しく微笑みかけた。
ヒートマンが精一杯助けようとした小さな小さな命。今はもう動くことはないけれど、その優しい気持ちはきっと何物にも変えられないほどに大切なもので、それを教えてくれたこの小さな小さな命はきっとそれを教える為に小さな兄の下に来たんじゃないかと、ウッドマンはそっと思った。

それからは二人で一緒にヒートマンが最近に雀を見付けた木の下に小さな小さなお墓を作ってあげた。
その時、ウッドマンは側に生えていた花を根を千切らないようにそっと掘り起こすとそのお墓の上に植える。

『これで一人じゃないよ』

『うん・・・ありがとう、ウッド』

土を掘った手で涙を拭ったせいでヒートマンの顔は汚れてしまったけど、涙に濡れた濡れた笑顔はぎこちなかったけど、今まで見た笑顔の中で一番綺麗だった。

最後の涙が頬を伝い、一粒、花弁にポタリと落ちて笑うように花が揺れた。


― ― ― ―


ヒーちゃんがちょっと大人になったある日の昼下がり


百物語

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プロフィール

恵理

Author:恵理
好きな子ほど上手く描いてあげれないぶきっちょヘタレですm(_ _)m

ヘタレとツンデレに愛を注ぎつつ語ったり日記書いたりしながらちまちまやっていきたいなぁ・・・(遠い目)

最近の口癖は「ドキッとした」

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